ソラマメブログ

  
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2012年04月30日

DIG-UP ART COLLCTION 2



DIG-UP ART COLLCTION

秋吉 巒

 SM雑誌の存在を知ったのは中学のころだったろうか。始めからボクの場合、変態的なイメージは無く、ただポルノの一ジャンルとして受け止めていたような気がするし、周りの友人たちも同様だったと思う。で、そのSM雑誌の70年代の代表的な「顔」のひとつに秋吉 巒のイラストがある。
 秋吉 巒は一言でいって不出世の天才であった。また、生前は自作をすべて手放さなかったという伝説もある。普通、画家は描いた絵を売って生計をたてるわけだが、秋吉はそれをしなかった。自然生活は圧迫されるので、作品を手放さずに済む雑誌のイラストなどを主に手掛けることになったのだろう。
 どういういきさつでそうなったのか、やはり生活のためだったのか、秋吉はまず、カストリ雑誌の表紙でその技を公にする。後にこの頃の作品を偶然目にした外国人が、秋吉家を訪れ作品を譲ってほしいと迫ったときにも秋吉はかたくなに拒んだという。日本のコレクターでも、銀座で画廊を開いていた林氏なども秋吉家を訪れ作品を譲ってもらいたいという交渉をしたらしいが、やはり拒まれたということである。
 また、旧「宝石」誌上では香山 滋の作品にイラストを付けたりもしていたが、ほかはもっぱらSM誌上での活躍となる。この辺り、アダルト雑誌のイラストは林 月光のペンネームで使い分けていた石原豪人や、秋吉同様シュールな絵画を描いていた藤野一友(アダルト雑誌では中川彩子または中川あや)とは異なる。
 秋吉の絵の魅力とは何なのだろうか。ひとつには雑誌作品、いや秋吉の全作品に通じて言える事であるが、エキゾチックな女性が常に描かれているということだろう。そして彼女たちの多くはその肌を惜しげもなく晒しているが、そこには卑猥な空気はなく、美しく幻想的な世界が展開している。北原童夢が「フェティシズムの修辞学」でSM画家を取り上げたとき秋吉 巒は入っていなかったが、まさにこの点において、秋吉の作品がSMを越えた芸術作品であることを示している。
 秋吉がもっとも活躍したのはSM雑誌がポルノの一ジャンルとして定着して行ったのと同じ70年代であるが、彼の作品の持つ幻想性とSMイラストにおける神秘性と言ったものは、むしろ90年代に入ってからのボンデージブームにより近かったように感じられる。それは秋吉の作品にシュールレアリズムの流れがあるのと同じ意味で、肉体的なエロスだけでなく、精神的なエロスであったと言うことが出来るからだと思う。
 秋吉は雑誌におけるイラストのほかに油彩をコツコツと描き溜めており、死後、一度だけ銀座の青木画廊で回顧展として発表されている。雑誌に発表された作品も晩年は編集者がアトリエを訪れ、保管されている油彩のなかから適当なものを選んでいたという話も聞いている。
 この回顧展時には美術手帳などにも特集が組まれ、初公開の油彩というように紹介されていたが、実のところそれらの多くは昭和49年に出た『異端文学』という超マイナー誌の巻頭でカラーで紹介されたものである。秋吉の油彩はダリやキリコといった画家たちの世界に近い。が、彼らのように乾いてはおらず、日本的な感情によって創り上げられた秋吉ワールドがそこにはある。
 それにしても残念なのは秋吉 巒の画集が無いことだ。油彩作品は勿論のこと、『SMキング』『SM綺譚』などの雑誌の表紙を飾った作品、小説などの挿絵として描かれたモノクロ作品など、どこかでわずかでもまとめられないものだろうか。

初出/「TOWER」森海社刊・92年

追記・その後画集は刊行されている。が、まだまだ埋もれた作品は多い。
追記2・上記の画集もいまは入手困難であるが、東京飯田橋にある「風俗資料館」から、挿絵イラストなども含めた作品集が刊行されている。


 こんな秋吉 巒の、SM雑誌の表紙や挿絵イラストなどを、Gallery Bar ANOTHER DOORで展示しております。
 ANOTHER DOORへはコチラから。

  

Posted by 猫目ユウ at 18:10Comments(0)ANOTHER DOOR

2012年04月23日

DIG-UP ART COLLCTION 1



DIG-UP ART COLLCTION

沖 渉二

 沖 渉二の作品には正統派の挿絵画家の実力を感じる。挿絵を付けた小説等のイメージを邪魔しない人物とシーンを具体的に見せるスタイルはまさにプロフェッショナル。挿絵の他にもSMイラスト、劇画などでも魅力的な作品を発表しており、特にイラストにおいてはその本領を遺憾なく発揮している。沖の作品は主に70年代のSM雑誌に多く、描かれた人物や背景などにその時代の印象が強く現れているように感じる。またオリジナルイラストでは着物を着た女性も好んで描いていてより日本的なものへのアプローチも、70年代的な女性の顔、スタイルとともに独特の時代の雰囲気を醸しだしている。また背景に描かれた布団や着物の皺も細かく描かれ、画面のなかの動き、登場人物がその状態に至った過程までもが感じられる。沖の作品の多くは鉛筆を使ったもので、線や濃淡を使ったテクニックとデッサン力はきちんと絵を勉強したことをしょうめいしているだろう。そんな沖の作品は劇画作品の単行本(サン出版)が1冊刊行されただけであとはまとめられてない。残念である。

初出/レディースコミック「微熱」98年11月号

追記:その後「ソフトマジック」から劇画作品が単行本化され、それは「マガジンファイブ」から改訂版として再刊行されている。またイラストストーリー『バラクーダ』も刊行された。本文中で触れている「サン出版」の単行本も復刻されている。

 そんな沖 渉二のイラスト作品を、Gallery Bar「ANOTHER DOOR」で展示中。
 ANOTHER DOORへはコチラから。

  

Posted by 猫目ユウ at 23:30Comments(0)ANOTHER DOOR

2012年04月03日

弾き語りLive in 波音



 本日は、粉塵秋葉原SIMにある、ライブハウス「波音~Namine~」さんで、弾き語りライブをちょこっとさせていただきます。
 いまから小一時間ほどのライブになるかと思います。

 お時間のある方は「波音~Namine~」までいらしてください。

 ネトラジが聞けるソフトでSL外でお聴きになる方は、下記のURLを再生してください。
http://std1.ladio.net:8020/NEKOME9999
  

Posted by 猫目ユウ at 19:39Comments(0)Live