アナザーリアリティー試論・5

猫目ユウ

2010年02月02日 01:53


 さきにユーザーと、アバターやキャラクターの関係を腹話術師と人形に例えたが、腹話術師の人形はひとつではない。動物であったり子供や老人といった、話を進める上での役割を演じる用途によって使い分けられる。
 これは、MMORPGでよく見られる、1ユーザーが複数のキャラクターを制作し使い分けることにも共通しないだろうか。
 MMORPGでは、キャラクターの種族や職業の種類によって、複数のキャラクターで楽しむということがあらかじめ想定されているので、1ユーザーが複数のキャラクターをつくることを容認している。また持ち物にアイテムが入りきらなくなることもあり「倉庫キャラ」という、持ち物を持たせるだけのキャラクターを作ることも半ば常識化している。
 種族や職業によってキャラクターの外見は違い、名前も変えて作ることになるが、同じユーザーが操作することで、共通性は出てくる。しかし複数のキャラクターが全く同じかというと、キャラクターの外見や能力によってユーザー自身が使い分けをしている面もあると思う。これが腹話術師と人形の関係に近いのではないかと思えるのだ。
 ユーザーの意思を反映したもうひとりの自分ではあっても、ある程度の距離感をも意識したもの、それがアナザーリアリティーの世界ではないだろうか。




※「おたくま経済新聞」にてコラム連載中。
http://www.otakei.otakuma.net/
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